採用、福利厚生、仕事と家庭の両立支援など、人事労務に関する制度は多岐にわたります。他社はどのような制度を取り入れているのか、実施率が高いのはどの制度なのかなど、企業にとって気になるところです。本稿では、一般財団法人 労務行政研究所が行った「人事労務諸制度実施状況調査」の結果をお伝えします。制度の導入・見直しの参考になさってください。
1.内部通報制度がトップ
今年6月に公表された調査結果では、主要な28の制度・施策の実施状況が紹介されています。実施率の高い順に並べたのが次の表です。
| 制度・施策 | 実施率(%) |
| 内部通報制度 | 93.3 |
| 定年後の再雇用制度 | 90.3 |
| 仕事上での旧姓使用 | 84.6 |
| 職種別採用 | 83.2 |
| ハラスメント対策研修 | 81.2 |
| メンタルヘルスに関する相談窓口 | 76.8 |
| 情報管理規程の作成 | 75.8 |
| 裁判員休暇 | 74.8 |
| テレワーク・在宅勤務 | 73.2 |
| リファラル採用 | 57.4 |
| 職能資格制度 | 53.7 |
| 副業・兼業の容認 | 52.3 |
| 男性社員の育児休業取得促進 | 49.3 |
| 人材スカウト会社の利用 | 49.0 |
| フレックスタイム制 | 49.0 |
| エンゲージメントサーベイ | 48.3 |
| 役割等級制度 | 46.6 |
| 私傷病休職からの復職支援プログラム | 42.3 |
| 職務等級制度 | 35.9 |
| 70歳までの就業機会確保措置 | 32.2 |
| 独身寮 | 31.5 |
| 福利厚生代行サービス | 28.9 |
| 61歳以上の定年制 | 22.5 |
| 人事労務関連業務でのAI活用 | 20.8 |
| 治療と仕事の両立支援 | 18.5 |
| GLTD(団体長期障害所得補償保険)への加入 | 17.1 |
| サテライトオフィス | 15.8 |
| LGBTQへの配慮施策 | 7.4 |
※出典:一般財団法人 労務行政研究所「人事労務諸制度実施状況調査」
実施率トップは「内部通報制度」でした。昨年6月に公布され、今年12月1日に施行される改正公益通報者保護法の影響が大きいとみられます。改正法は、体制整備の実効性確保や通報者保護の強化を図るものです。従業員301人以上の企業には「公益通報対応業務従事者」の指定が義務づけられており、違反すると消費者庁の指導・助言、勧告等を受けます。改正法では、勧告に従わない場合の命令や、命令違反時の刑事罰(30万円以下の罰金)などが加わりました。
2.上位に採用関連
実施率2位は「定年後の再雇用制度」でした。定年を65歳未満に定める企業には、定年制の廃止、65歳までの定年引上げ、希望者全員を対象とする65歳までの継続雇用制度の導入のいずれかが求められます。
3位は「仕事上での旧姓使用」の84.6%、4位は「職種別採用」の83.2%でした。職種別採用は、2010年調査の53.4%から大きく上昇しています。一方、「ハラスメント対策研修」は81.2%、「メンタルヘルスに関する相談窓口」は76.8%、「情報管理規程の作成」は75.8%でした。「裁判員休暇」「テレワーク・在宅勤務」も70%を超えています。法令違反や職場トラブルの防止、従業員が働き続けられる環境の整備にも、多くの企業が取り組んでいることが分かります。
3.さいごに
今回の調査では、内部通報制度やハラスメント対策といったリスク管理に関する制度のほか、高年齢者の雇用継続、採用方法の多様化、柔軟な働き方に関する制度が上位となりました。人事労務制度の整備は、一つの分野だけで完結するものではなく、企業が抱える課題に応じて総合的に検討する必要があります。
また、実施率が高い制度が、必ずしもすべての企業にとって優先度が高いとは限りません。自社の人員構成や採用状況、職場で生じている課題を確認したうえで、必要な制度から整備することが重要です。制度の新設や見直しについて自社だけでの判断が難しい場合は、弊所までご相談ください。
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