人手不足に悩む企業が増える中、高年齢者の雇用継続や活躍推進をどのように進めるかが重要なテーマとなっています。厚生労働省も高年齢者の就業機会を増やすため、新しい「高年齢者等職業安定対策基本方針」を策定しました。本稿では高年齢者の就業に関する状況に触れながら、新しい基本方針の内容を紹介します。高齢人材活用の参考になさってください。

💼 高年齢者雇用の制度づくりを相談する

1.就業状況の現在

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)で、すべての企業に65歳までの雇用確保が義務づけられています。さらに、70歳までの就業機会の確保も努力義務となっています。

これらの流れも後押しして、高年齢者の就業率(令和6年)は、60~64歳で74.3%に達しています。10年前と比べ13.6ポイントも上昇しました。65~69歳で53.6%に上り、同じく13.5ポイント増となっています。

また、70歳までの就業機会を確保している企業の割合(令和7年)は34.8%で、定年後の賃金水準を定年前の8割以上とする企業も39.6%(令和6年)となっています。

また、高齢期に働き続けたいと考える人も少なくありません。内閣府が60歳以上を対象に行った調査によると、「何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか」という問いに対し、「70歳くらいまで」「75歳くらいまで」「80歳くらいまで」「働けるうちはいつまでも」と回答した人の割合は、合計で6割を超えています。他方で、「65歳くらいまで」と「仕事をしたいとは思わない」の合計は、約3割という結果となっています。

何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか

何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか聞いた60歳以上の回答割合を示すグラフ

※出典:内閣府「令和6年度 高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)」

2.新しい基本方針の3つの目標

高年齢者の就業を巡るこうした現状を踏まえ、厚生労働省は、高年齢者雇用安定法に基づく「高年齢者等職業安定対策基本方針」を改定しました。対象期間は令和8~11年度の4年間とし、高年齢者の就業機会を増やすため、次の目標を掲げています。

目標項目 目標 直近実績
60~64歳の就業率 79.0%以上 74.3%
(令和6年)
65~69歳の就業率 57.0%以上 53.6%
(令和6年)
70歳までの就業確保措置の実施率 40.0%以上 34.8%
(令和7年6月1日現在)

目標を達成するため、65歳までの雇用確保義務について企業への指導を徹底し、70歳までの就業確保(努力義務)についても普及を進める方針です。あわせて、賃金・人事制度を見直し、高年齢者の処遇改善に取り組む企業などへの助成を強化するほか、全国の主なハローワークにある「生涯現役支援窓口」での再就職支援にも力を入れるとしています。

※出典:厚生労働省「新たな『高年齢者等職業安定対策基本方針』を策定しました」

意欲的に再就職を目指すシニア女性

3.さいごに

新しい基本方針では、高年齢者の就業機会をさらに広げていく方向性が示されています。企業においても、65歳までの雇用確保措置の適切な運用に加え、70歳までの就業確保措置について、自社の業務内容や人員体制に応じた対応を検討していくことが重要です。

もっとも、高年齢者の雇用継続や新たな雇入れを進める際には、単に働く場を用意するだけでなく、安心して能力を発揮できる職場環境を整えることも欠かせません。特に注意したいのが、労働災害の防止です。

高齢層は、他の年代と比べて労働災害の発生率が高く、災害が発生した場合に休業期間が長くなりやすい傾向があります。このため、2026年(令和8年)4月1日から、改正労働安全衛生法が施行され、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善など、労働災害防止に必要な措置を講ずることが企業の努力義務とされました。あわせて、厚生労働省は、高年齢者の労働災害防止に必要な事項をまとめた指針も策定しています。

高年齢者の中には、長年の経験や知見を業務に生かせる方も少なくありません。一方で、体力、健康状態、希望する働き方には個人差があるため、職務内容、勤務時間、作業環境を丁寧に確認することが重要です。制度整備と安全衛生対策を両輪として、高年齢者が無理なく能力を発揮できる職場づくりを進めていきましょう。弊所でも雇用継続制度の見直し、賃金・人事制度の設計、安全衛生面の確認を含めてサポートいたします。

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