急ぎの案件や顧客からの要望で、勤務時間外に従業員と連絡をとることはないでしょうか?業務上やむを得ない面もあるかもしれませんが、近年、労働者には勤務時間外に職場と「つながらない権利」がある、という考え方が広がっています。

厚生労働省でも、法的措置について議論されているホットなテーマなので、本稿で取り上げようと思います。

6割強がストレスを感じる

「つながらない権利」が話題になる背景には、スマホが普及しチャットなどで常に連絡がとれるようになったことや、コロナウイルスの蔓延に伴うテレワークの定着があります。これらにより、勤務時間と私生活時間の区別があいまいになってきたのです。

しかし、業務時間外の連絡は従業員にとって負担です。日本労働組合総連合会(連合)の「”つながらない権利”に関する調査2023」によると、企業などに雇われて働く942人に、「勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくるとストレスを感じるか」と質問したところ、「感じる」が62.2%、「感じない」は37.8%となりました。

また、「勤務時間外に部下・同僚・上司からきた業務上の連絡の内容を確認しないと、内容が気になってストレスを感じるか」という問いには、「感じる」が60.7%、「感じない」が39.3%でした。

勤務時間外の社内連絡への意識

厚生労働省の「令和5年 労働時間制度等に関するアンケート調査」でも、「勤務時間外の社内連絡についてどのように考えるか」という質問に対し、以下のような結果が出ています。

回答 割合
積極的に対応したい 0.4%
できれば対応したくないが、やむを得ない 8.2%
対応したくない 38.0%
その他 53.5%

「その他」の具体的な回答内容としては、「案件の重要度によって対応要否が分かれる」「対応する・しないの裁量があるため対応しなくてよい」などが挙げられています。

企業の対応

業務時間外の連絡について、労働者が業務時間外に安心して休めるようにする観点から、海外の一部の国では「つながらない権利」について法制化する例もあります。

フランスでは、従業員は勤務時間外にメール等に返信しなくてよい権利を持つことが法律で定められています。また、従業員50人以上の企業では、「つながらない権利」のあり方について、労使で協議する事項として法定化されています。

日本企業のルール整備状況

日本の企業はどう対応しているのでしょうか。厚生労働省の「令和5年 労働時間制度等に関するアンケート調査」で、勤務時間外や休日の社内連絡(メール・チャット・電話等)に関するルールについて企業に質問したところ(3,441社、複数回答)、次のような結果が出ました。

勤務時間外や休日の社内連絡に関するルールの調査結果。特段ルールなしが36.7%、緊急連絡以外しないが29.6%など

※出典:厚生労働省「令和5年 労働時間制度等に関するアンケート調査」

「特段ルール等は整備しておらず、現場に任せている」が36.7%と最も多く、約4割の企業が明確なルールを設けていない状況です。一方、「勤務時間外や休日には、災害時等の緊急連絡を除いて連絡しないこととしている」が29.6%、「翌営業日に対応が必要など、急を要する業務に関する連絡のみ認めている」が26.5%と、一定のルールを設けている企業も見られます。

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さいごに

厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」の報告書(令和7年1月公表)では、以下のように述べられています。

「勤務時間外に、どのような連絡までが許容でき、どのようなものは拒否することができることとするのか、業務方法や事業展開等を含めた総合的な社内ルールを労使で検討していくことが必要となる。このような話し合いを促進していくための積極的な方策(ガイドラインの策定等)を検討することが必要と考えられる」

この報告書を受けて、厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会で議論が進められており、今後の動向に注目が集まります。

やむを得ない連絡が必要となる場面もあるかもしれませんが、前述のストレスがもたらすリスクも踏まえつつ、従業員が負担を感じない運用を検討していきましょう。

ご不明点やお困りごとがございましたら、お気軽に社労士法人Aokiまでお問い合わせください。

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