社会保険の適用拡大の意義
今回のコラムは、社会保険適用拡大の制度改正についてのおさらいです。
これまで段階的に進められている社会保険適用拡大ですが、
令和6年10月から従業員数(※)51~100人の企業で働くパート・アルバイト(短時間労働者)
が新たに社会保険の適用になります。
※従業員数は厚生年金保険の被保険者数のことを指します。
これにより、中小企業においてもより多くの労働者が社会保険の適用を受けることが可能になります。
そもそも、社会保険適用拡大とは何なのか? なぜ実施するのか?まずはそこからおさらいしましょう。
☆社会保険適用拡大とは…?
社会保険適用拡大とは、特定の労働者、主に短時間労働者に対して、厚生年金保険や健康保険の適用範囲を広げる政策のことを指します。
この適用拡大は従来、社会保険の対象となるための条件に達しない方々に、社会保険の保障を提供し、全ての労働者が公平に社会保険の恩恵を受けられるようにするための措置です。
☆なぜ実施するのか…?
- 社会保険制度における不公平を解消し、労働者の選択をより自由にするため
- 賃金に応じた給付を得ることができ、基礎年金に加えて報酬比例給付が受けられるようにするため
- 雇用を通じての労働者の健康維持や労働生産性の向上につながるため
さらに、適用拡大には以下のメリットがあります。
・短時間労働者が国民年金や国民健康保険から、より安定した社会保障のある厚生年金保険や健康保険へと移行することで、より多くの保障を確保できるように。
・企業にとっても、社会保険の適用が広がることは従業員の満足度向上や人材の確保・育成に寄与し、企業の魅力を向上させるという利点があります。
このように社会保険適用拡大は、個々の労働者の福祉向上だけでなく、企業の持続的な成長と社会全体の均衡の保持にも寄与する重要な政策なのです。
社会保険拡大の条件
適用拡大の対象となる社会保険に加入するための基本的な要件は以下の4点です。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 2ヶ月以上の継続雇用が見込まれること
- 月の賃金が88,000円以上であること
- 学生ではないこと
これらの要件を満たすパートタイムやアルバイト労働者も社会保険の対象となります。ただし、月の賃金は基本給及び諸手当を指しますので、残業代・賞与。通勤手当・臨時的な賃金は含みません。
新たに社会保険に加入する従業員は、ご家族の扶養に入っていた場合は外れる手続き、国民健康健康保険に加入していた場合は脱退する手続きが必要です。
- ご家族の扶養から外れる手続き→ご家族の勤務先に連絡して、手続きしてもらう
- 国民健康保険脱退の手続き→ご自身で役所にて手続きします
社会保険に加入すると、将来の年金額が増えたり、病休や育休期間中に給与の2/3相当が支給されるようになります。
しかし、給与から社会保険料が引かれることで手取りが減ることを懸念される従業員の方もいらっしゃいますよね。
もしも、社会保険未加入のままにしたい場合は、20時間を超えて恒常的に残業しないようにする、月額8万8000円以下に抑える等対策が必要です。
社会保険加入のメリット・デメリットを踏まえて、ご自身のライフプランに合った働き方を考えたいですね。